“プラチナ”をテーマに世界の注目を集めた「Jewellery & Gem WORLD Hong Kong 2025」
2025年9月15日〜21日にかけて、香港で開催された「Jewellery & Gem WORLD Hong Kong(JGW)」は、1983年から続く世界最大規模のジュエリーとジェムのBtoB見本市です。例年3,000を超える出展者が参加する展示会には、世界中のバイヤーとサプライヤーが集まり、商談が立ち上がる場として国際的に位置付けられています。
金価格の高騰が続くなか、桑山は今年のテーマをプラチナに明確化。量産での安定品質が難しいこの素材で、マシンチェーン/CNC/キャスト製品を発表し、OEMに応える高い技術力と生産体制を前面に打ち出しました。会期中は悪天候の日もありましたが、桑山のブースは人の流れが絶えず、プラチナを起点に新たなつながりが次々と生まれました。
香港展示会で世界に届ける、桑山の実力
▲ Jewellery & Gem WORLD Hong Kong 2025
桑山の香港ジュエリーフェアへの出展は、1998年に始まり、2025年まで28年にわたり連続出展を続けています。これに加え、世界各国の海外見本市にも積極的に参加し、グローバル市場の開拓に取り組んできました。こうした継続的な海外見本市への挑戦を通じて、自社の研鑽や技術力の向上に努めてきました。
各フェアには個性があり、アメリカ(ラスベガス)で開催されるJCKは米国市場直結、イタリアで開催されるVicenzaoroは意匠や潮流の観察に適すると考えられています。近年桑山が出展を続けている「Jewellery & Gem WORLD Hong Kong」は、開かれた貿易環境と国際物流ハブという地の利を背景に、商談が前に進みやすい展示会として知られています。
なかでも桑山は、有名ジュエリーブランドが名を連ねる「プレミアパビリオン」に出展。9/19にはプラチナ・ジュエリーの国際的広報機関であるプラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)主催のパネルディスカッションにも参加し、プラチナジュエリーの市場動向や桑山の製品について業界のキーパーソンたちと意見を交わしました。(CREAMER MEDIA’S MINING WEEKLYによる記事)
▲ PGIが主催したカンファレンスの様子
積み上げてきたプラチナの加工技術で、競合と差をつける
金価格の高騰を受けて、ホワイトゴールドが主流の国を中心に、プラチナへと品揃えを移すニーズが世界各地で顕在化しています。とはいえ、プラチナは工具摩耗・加工難・歩留まりの観点でハードルが高く、品質を維持しながら生産を拡張することは非常に難しい商材です。しかし、桑山は創業期から60年以上プラチナの加工に向き合い、チェーンの対応幅、海外標準であるPt950ラインナップの拡充、検査・保証を含む運用まで、プラチナ製品を高品質かつ安定的に生産できる基盤を磨いてきました。
そこで、今年の展示会テーマを「プラチナ」に絞り、ブースのメッセージや空間デザインもプラチナに統一。展示サンプルの仕上がりは、自社基準においても非常に手応えのあるものとなりました。
▲ 展示会で発表した桑山のプラチナ製品(一部)
会場全体の賑わいは天候の影響もあり例年より控えめな印象でしたが、桑山ブースは昨年と比べても増勢を感じられる来訪状況でした。用意していたリーフレットも想定よりも早く残りわずかとなり、途中から配布対象を限定する場面も生じました。「プラチナを任せられるメーカーを探している」という明確な目的を持った来場が目立ち、今年の出展の狙いが確かに届いた結果を得ることができました。
▲ 来場客で賑わうJewellery & Gem WORLD Hong Kong 2025

▲ プレミアパビリオンに出展した桑山のブース(左)/プラチナの技術を全面に打ち出した桑山のブースコンセプト(右)
「会場随一の仕上がり」と高評価をいただいたタネルチェーン
チェーンではPtマシンチェーンの引き合いが最多となるなど、今年はターゲットに刺さるポイントがいっそう明瞭でした。加えてデザインチェーンの反応も良く、なかでもプラチナとK18の2種類の金種を用いたタネルチェーンは、海外バイヤーから「会場随一の仕上がり」との評価をいただきました。

▲ プラチナとK18の2種類の金種を用いたタネルチェーン。
二種類の軸を用い、二方向のひねりを与えながら編み上げるタネルチェーンは、シリンダー制御で製造しているため、機械工学の知識とデータ分析を組み合わせたアプローチが不可欠です。最終的には、工学的データだけでなく、目と手で仕上がりを見極める職人の肌感覚を融合させることで、均整のとれたひねりの美しさと、チェーン全体のしなやかさが高い完成度で表現されます。これは、長年蓄積してきた桑山の工学的知見と、職人の経験に裏打ちされた技を掛け合わせた製造力の一例です。
海外市場で掴んだ手応えと、得られた学び
コロナ禍が明けてしばらくは、バイヤーの選定も保守的な印象でしたが、今年は風向きが変わったように感じました。なかでも、“プラチナ製品を製造・加工できるメーカーを探しに来た”来場者が例年と比べて多かったことが特徴でした。OEM前提の具体商談が立ち上がり、受注化が見込める案件も増えました。
桑山の強みである品質の均質性、納期の確実性は世界基準でも通用する力であることを再認識しました。一方で、海外競合の素材開発と意思決定のスピードは脅威でもあります。昨年は「プラチナは扱わない」としていたメーカーが、今年は一定のPtラインを用意する例も見られました。展開の速い市場に対して、それ以上に速いスピードで応え続けることの必要性を感じました。
海外展示会には社員の成長機会でもあるため、各部門から選抜されたメンバーも視察を目的に同行します。今回の同行メンバーからも、多くの学びの声が挙がりました。この経験を糧にさらなる研鑽に励むことを期待しています。
おわりに
中国とタイに事業拠点を持つ桑山にとって、香港で開催された本展示会は、新規開拓と既存取引の深耕を図るうえで重要な機会と位置づけていました。来場者の反応も良好で、満足のいく成果を得られました。
金相場は今後も高騰基調が続くと見込まれ、プラチナへの関心の高まりも想定されます。今回の展示会で得た手応えは、桑山のさらなる進化に向けた示唆となりました。今後は、見積もりと試作のリードタイムを着実に短縮し、Pt950の標準仕様を丁寧に整備しながら、市場を見据えた開発を進めてまいります。中国・タイ拠点で培った運営・物流の経験をいかし、これからも「心と夢を輝きでむすぶ」を世界へお届けしていきます。